詐欺被害のお金はなぜ戻らないのか――警察が逮捕しても回収が難しい現実

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「警察が逮捕したなら、お金は戻るはず」――そう信じてしまう人は多いでしょう。

しかし現実には、詐欺で失ったお金の大半は戻ってきません。

その理由は、資金が瞬時に引き出され、分散・隠匿されるなど、回収の壁が非常に高いためです。

本記事では、詐欺被害金が返らない構造的な理由と、被害者の絶望に寄り添うために知っておきたい現実を整理します。

◆ なぜ警察が逮捕してもお金は戻らないのか

1. 犯人は資金をすぐに引き出す

詐欺で送金されたお金は、被害者が気づく前に現金化されます。

さらに複数の口座に転送されたり、暗号資産や海外送金で隠されたりするため、警察が凍結を行うころには残高がゼロになっているケースが多いのです。

2. 「返金率88%」は一部の限定ケース

ニュースで聞く「返金率88%」という数字は、凍結された口座内に残っていた金額の割合を指します。

実際には、資金がすでに引き出されているケースが圧倒的に多く、被害総額全体で見れば回収率はわずか数%に過ぎません。

3. 実際の返還率は約5%前後

警察庁の統計によると、2023年の特殊詐欺被害額は約441億円。

そのうち返還されたのは約24億円――およそ5%にとどまりました。

ほとんどの被害者が、金銭的に取り戻せない現実に直面しています。

4. 民事裁判・示談でも限界がある

たとえ裁判で勝っても、犯人に資産がなければ回収できません。

また、詐欺グループの多くは資産を他人名義で隠しており、差し押さえが困難です。

刑事裁判での判決は「処罰」であって、「返金」ではない点にも注意が必要です。

5. 海外送金・投資詐欺はほぼ絶望的

国際的な詐欺では、資金が海外口座に移された時点で追跡が困難になります。

海外銀行の協力を得るには時間と手続きがかかり、その間に資金はさらに別の国へと移されてしまうのです。

◆ 被害者が直面する“二重の苦しみ”

金銭的損失の回復見込みがほぼない

「犯人が捕まったから安心」という期待が裏切られ、実際にはほとんど返ってこない。

この現実に直面することで、被害者は深い絶望に陥ります。

精神的ショックと孤立

長期間信じていた相手に裏切られたショックや、自責の念から心身を壊すケースもあります。

さらに「自分が悪い」と感じて周囲に話せず、孤立してしまう人も少なくありません。

「泣き寝入り」を生む社会構造

詐欺被害者に対する支援制度や返金システムはまだ十分ではありません。

「自己責任」という言葉で片づけられ、相談できる先も限られている――それが被害者をさらに追い込んでしまう現実です。

◆ 被害を減らすためにできること

  • 「うまい話」「限定」「特別」には警戒を。
  • 家族・友人に必ず相談。 早期発見が最大の防御になります。
  • 振込後すぐに金融機関へ連絡。 振り込め詐欺救済法の対象になる可能性があります。
  • 情報共有をためらわない。 体験談を共有することで、他の人の被害を防げます。

◆ まとめ:逮捕=解決ではない

警察の逮捕や判決は“犯罪への制裁”であり、“被害金の回収”とは別の話です。

お金を守るためには、「疑う勇気」と「早めの相談」が何よりも大切です。

そして、被害者が孤立せず立ち直れるよう、社会全体で支える仕組みが求められています。

詐欺の被害は、決して「うっかりした人」だけの問題ではありません。
誰でも、タイミングと心理のすき間で巻き込まれる可能性があります。
一人ひとりが知識と共感を持ち、「もう一度立ち上がれる社会」を目指していきましょう。
また明日!

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