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結論:ギフトの費用は、最後に契約した人が払っている。もらうなら「契約しない」と決めてから
「面談するだけで1〜3万円分」のギフトが配れるのは、面談した人のうち一部が契約すれば、配った分を回収できる計算が成り立つからです。ギフトの費用は、最後に契約した人の支払いの中から回収されます。
だから、ギフトをもらうこと自体を怖がる必要はありません。ただ、もらうなら、面談に行く前に「その日は契約しない」と決めておく。この記事で伝えたいのは、この一点です。
この種の広告に興味を持つのは、自然なことです。話を聞くだけでポイントやギフト券がもらえるなら、少し気になるのは当たり前。決める前に、仕組みを知っておけば大丈夫です。
一晩で、この種の広告がいくつも流れてきた
ある晩、私のスマホに、似た広告がいくつも続けて流れてきました。会社名は伏せ、ギフトの名前は一般名に置き換えて紹介します。
| 広告の見出し | 対象 | ギフト |
|---|---|---|
| 教職員のための、お金と不動産の勉強会 | 年収500万円以上 | 面談完了で、スマホ決済のポイント1万円相当(本文に「押し売りはありません」) |
| 税金対策セミナー(参加無料) | 25〜49歳・会社員向け | セミナー参加(個別相談含む)+条件達成で、ネット通販のギフト券15,000円分 |
| 年収700万円からの新常識 | 年収700万円から | ネット通販のギフト券30,000円分(※特典の条件はWEBページで) |
私は公立中学校の教員です。2026年6月に伊奈町立小針中学校、7月に東松山市立北中学校で講演をしました。講演では、生徒に「タダより高いものはない、ではなく、タダには理由がある」と伝えています。
「タダより高いものはない」とだけ教えると、生徒は「無料のものは全部あやしい」と受け取りがちです。でも、それでは世の中の無料サービスのほとんどが使えなくなります。大事なのは、疑うことではありません。「なぜタダなのか」を自分の言葉で説明できることです。理由を説明できれば、安心して使えるものと、立ち止まったほうがよいものを、自分で分けられます。
その晩の広告には、「教職員のための」と、先生を名指ししたものもありました。先生は忙しく、お金のことを落ち着いて学ぶ時間がなかなか取れません。そこに「勉強会」と「ポイント1万円」が並べば、心が動くのは当然です。
私は講演でも、このブログでも、金融商品を売っていません。だから、ギフトを配る理由がありません。配る側には、配る理由がある。その理由を、生徒に話すときと同じように、算数で説明してみます。
ギフトを配ること自体は、よくある販促
先に、公平に書いておきます。来てくれた人にギフトを渡すのは、昔からある普通の販促です。たとえば、住宅メーカーの来場特典。展示場を見学するとギフトがもらえる、という企画を見たことがある人も多いと思います。
ギフトが出ること自体は、問題ではありません。見るべきは、ギフトの後に何を勧められるかと、それを自分が必要としているかです。住宅展示場なら、「家を建てたい」という目的が先にあって、ギフトはおまけです。面談の広告では、まだ目的が決まっていない人にとって、ギフトが入り口になることがあります。違いは、ここにあります。
1人に3万円払っても割に合う算数(仮の数字で)
中学生に説明するなら、私は黒板にこう書きます。以下の数字はすべて説明のための仮の数字で、特定の会社や業界の実際の数字ではありません。実際の条件は、会社や商品によって違います。
前提(仮の数字)
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 面談に来た人 | 100人 |
| 1人あたりのギフト | 3万円 |
| そのうち契約した人 | 2人 |
| 契約1件で会社に残る利益 | 300万円 |
式
②契約で得た利益=300万円×2件=600万円
③差し引き=600万円−300万円=300万円のプラス
④契約1件あたりのギフト代=300万円÷2件=150万円
100人に1人が契約すれば、元が取れる
授業なら、ここで生徒に聞きます。「会社が損をしないのは、100人のうち何人が契約したときでしょう?」
答えは、300万円÷300万円=1件。つまり100人に1人です。99人が契約しなくても、計算は成り立ちます。広告に「押し売りはありません」と書けるのも、算数としては自然です。ほとんどの人が契約しなくても困らない仕組みだからです。
逆に言えば、契約する人が1人もいなければ、この計算は成り立ちません。面談の先に何らかの提案があるのは当然のこと、と考えておくのが自然です。
この記事でいちばん伝えたいのは、④の150万円です。会社全体で見ると、100人分のギフト代は、契約した2人の支払いの中から回収される計算になります。ギフトは、会社にとって広告費の一種です。ネット広告にお金を払うのも、来てくれた人にギフトを渡すのも、「お客さんに会うための費用」という点では同じです。
広告のことばを読み替える
広告のことばを、一般的な仕組みと、確かめることに読み替えてみます。個別の広告がどうだという話ではなく、読み方の練習です。
| 広告のことば | 一般的な仕組み | 確かめること |
|---|---|---|
| 年収500万円以上/年収700万円から | 対象を収入で絞る条件。高額な商品やローンを前提にした提案では、収入が判断材料になりやすい | なぜこの年収条件なのか |
| 25〜49歳限定/会社員向け | 長く払い続ける提案と重なりうる年齢・立場の条件 | 年齢を絞る理由 |
| 教職員のための | 対象を職業で絞っている | 主催・講師の会社名と、その会社が何を売れる・仲介できるか |
| 参加無料 | 費用は誰かが負担している(上の算数) | 面談のあと、何を提案される可能性があるか |
| 条件達成で/※特典の条件はWEBページで | ギフトには条件がある | 面談の回数・時間、出す書類、もらえる時期、もらえない条件。申込み前に読み、画面を保存 |
| 押し売りはありません | 会社の方針の宣言 | 宣言があってもなくても、断る言葉は先に決めておく |
| 税金対策 | 何かの税金が減る、という説明 | 何の税金が、いくら、どの仕組みで減るのか。減った分より多い支出がないか。数字で、紙で |
| FP相談 | 相談相手の肩書き | 所属する会社と扱える商品。相談料が無料なら、その人はどこから収入を得ているのか |
表の最後の行は、生徒に伝えている「タダには理由がある」そのものです。相談相手の収入の出どころを聞くのは、失礼なことではありません。理由が分かれば、相手の話を安心して聞けます。
法律のルール:景品・勧誘・クーリング・オフ・個人情報
景品の上限は、取引の金額によって決まる
景品表示法では、お客さんを引きつける手段として、自社の取引に付随して提供する物品や金銭などを「景品類」として規制しています。商品を買った人だけでなく、来店した人に提供する金品も、取引に付随したものとして扱われます。
そして景品の上限は、取引の金額によって決まります。不動産業では、くじなどによらずに提供する景品の上限は、取引価額の10分の1か100万円の、いずれか低いほうです。取引の金額が大きければ、上限も大きくなります。だから、ギフトの金額が大きいことだけで、ルール違反とは言えません。どのルールが当てはまるかは企画ごとに違うため、この記事では個別の広告を判断しません。
ここからは、私の読み方です。上限が取引の金額で決まるのなら、ギフトの大きさは、その先にある取引の大きさを映している、と読めます。1〜3万円のギフトを見たら、「この先には、それなりに大きな金額の話があるのかもしれない」と想像しておく。それだけで、面談の場で落ち着いていられます。
不動産の勧誘で禁止されていること
不動産の売買を勧める宅地建物取引業者には、宅地建物取引業法で勧誘のルールが決められています。
| 条文 | 禁止されていること |
|---|---|
| 法 第47条の2第1項 | 利益が出ることが確実だと誤解させる断定的判断を伝える |
| 法 第47条の2第2項 | 契約させるため、またはやめさせないために相手を威迫する |
| 施行規則 第16条の11第1号イ | 物件の将来の環境や交通の便について、誤解させる断定的判断を伝える |
| 同 ロ | 正当な理由なく、契約するか考える時間を与えない |
| 同 ハ | 勧誘の前に、会社名・担当者名・勧誘が目的であることを告げない |
| 同 ニ | 契約しない、またはこれ以上の勧誘を望まないと伝えた人に、勧誘を続ける |
| 同 ホ | 迷惑な時間に電話や訪問をする |
| 同 ヘ | 深夜や長時間の勧誘など、生活や仕事の平穏を害する方法で困らせる |
特に「ニ」は、断る言葉を考えるときの手がかりになります。「契約しません」に加えて「今後のご連絡も不要です」と伝えると、法律の言葉とそのまま重なります。
国民生活センターの消費者トラブルFAQは、「説明するだけ」と言われて会うと、強引に勧誘されて断りきれないことがある、と注意を呼びかけています。同センターが2019年3月に公表した資料では、20歳代で投資用マンションの勧誘に関する相談が増えていることや、家賃保証に期限があって収支が赤字になった例が紹介されています。国土交通省も、投資用マンションの勧誘電話についての注意喚起ページを出しています。
クーリング・オフは「申込みの場所」で変わる
宅地建物取引業者が自ら売主となる売買では、業者の事務所等以外の場所で申込みをした人は、書面で申込みの撤回や契約の解除ができます(宅地建物取引業法 第37条の2)。このとき業者は、損害賠償や違約金を請求できません。ただし、撤回できることを告げられた日から8日を過ぎた場合や、物件の引渡しを受けて代金を全額払った場合は使えません。
注意したいのは「事務所等」の範囲です。業者の事務所や案内所などに加えて、自分から「自宅や職場で説明を聞きたい」と申し出た場合の自宅・職場も含まれます(施行規則 第16条の5)。また、事務所等で申込みをして、ほかの場所で契約した場合も対象外です。どこで申込みをしたかで、使えるかどうかが変わる。「その日は申込みをしない」と先に決めておく理由は、ここにもあります。
年収や勤務先を聞かれたら、使い道を聞いてよい
個人情報保護法 第21条により、事業者は個人情報を取得したら、利用目的を本人に通知するか公表しなければなりません。面談シートや申込みフォームのように本人が書いたものから取得する場合は、前もって利用目的を明示する必要があります。事業者に知らせる義務がある以上、「何に使いますか」と聞くのは自然なことです。
教員の場合、勤務先を答えれば、職場の場所まで分かります。答えるかどうかは、使い道を聞いてから決めれば十分です。
面談の前に決めておく5つ
生徒に教えるなら、私はこう伝えます。「断る言葉は、断る場面になってから考えても出てこない。だから、先に決めておく」。大人も同じです。
→その場の空気で決めないため。業者の事務所や、自分から指定した自宅・職場で申込みをすると、クーリング・オフの対象外になります。
□②ギフトの条件を申込み前に読み、画面を保存する
→「条件を満たしていない」と言われてもらえない、を防ぐため。何回・何をすれば達成かが分かれば、どこまで付き合うかも先に見えます。
□③年収・勤務先・家族構成を聞かれたら、「何に使いますか」と聞く
→事業者には利用目的を知らせる義務があります。答えるかどうかは、聞いてから自分で決めればよいのです。
□④断る言葉を2つ決めておく
その場で使う言葉:「今日は決めません」
断るときの言葉:「契約しません。今後のご連絡も不要です」
→国民生活センターは、断るときは「お金がない」ではなく「いりません」とはっきり伝えるよう呼びかけています。「お金がない」は、「では借りれば」と返されることがあるからです。
□⑤困ったら188。会社名・担当者名・免許番号・日時をメモしておく
→188は、身近な消費生活センターなどを案内してくれる番号です。メモは、相談するときの材料になります。
⑤について少し補足します。188の相談は無料ですが、窓口につながった時点から通話料がかかります。土日祝日も、施設点検日や年末年始を除いて原則毎日使えます。相手が宅地建物取引業者なら、免許を出した都道府県や国土交通省の地方整備局にも相談できます。埼玉県なら、建築安全課の宅建相談・指導担当(048-830-5488、平日)が窓口です。
よくある質問
Q. ギフトだけもらって、契約しなくても大丈夫ですか?
A. ギフトの条件次第です。条件に何が含まれているか(面談の回数、答える内容、もらえない場合など)は広告ごとに違います。申込み前に条件を読み、画面を保存しておきましょう。そのうえで「その日は契約しない」と決めて行けば、ギフトをもらうこと自体を後ろめたく思う必要はありません。
Q. 1人に3万円も配るのは、ルール違反ではないのですか?
A. 金額だけでは、そうとは言えません。景品の上限は取引の金額によって決まり、不動産業なら取引価額の10分の1か100万円の、低いほうです。取引の金額が大きければ、上限も大きくなります。
Q. その場で申込みをしてしまったら、取り消せますか?
A. 宅地建物取引業者が売主で、事務所等以外の場所で申込みをした場合は、告げられた日から8日以内なら書面でクーリング・オフができます。申込みの場所や時期によっては使えないので、迷ったら早めに188に相談してください。
出典
- 消費者庁「景品規制の概要」
- 消費者庁「不動産業における一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(告示)
- 首都圏不動産公正取引協議会「景品提供の方法と限度額」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
- 国民生活センター 消費者トラブルFAQ「投資用マンション」
- 国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」(2019年3月28日公表)
- 国民生活センター「【若者向け注意喚起シリーズ<No.4>】借金するよう指示し、強引に契約を迫る手口に注意」(2021年8月12日公表)
- 国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください」
- 消費者庁「消費者ホットライン」
- 埼玉県「不動産取引に関する相談窓口」
※2026年10月時点の情報です。
※算数の数字は説明のための仮の数字で、特定の会社や業界の実際の数字ではありません。
※この記事は広告の読み方を説明するもので、特定の広告や会社を評価するものではありません。
学校・PTAでの講演をご検討の方へ
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