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闇バイトの話を子どもとするとき、いちばん効果があるのは、怖い話をすることではありません。「困ったら相談していい」と先に伝えておくことです。実際に、応募したあとで相談し、本人や家族が保護された事例が、全国で544件あります。打てる手はあります。
私は現役の中学校教員で、教育現場16年目です。現在は育児休業中で、所属機関の承認を得て、学校で金融教育と詐欺防止の講演を行っています。中学2校での全校講演で、累計548名の生徒にこの話をしてきました。
生徒の前で話してみると、分かることがあります。この話は、怖がらせるほど届かなくなります。理由は、記事の後半で書きます。
勧誘は「怪しい人」からは来ません
まず、多くの保護者が持っているイメージを、データで確認します。
警察庁は、闇バイトに応募した人やその家族を保護した事例を集計しています。2024年10月から2025年11月末までに、その件数は全国で544件でした。
この544件について、応募したきっかけの内訳が公表されています。
| 応募のきっかけ | 割合 |
|---|---|
| 知人の紹介 | 30.7% |
| X(旧ツイッター) | 23.2% |
| その他のSNS | 21.9% |
いちばん多いのは、SNSの募集ではありません。知っている人からの紹介です。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
私が講演でいつも話すのは、この一言です。
最初は普通の人っぽい。
怪しい人には、誰も引っかかりません。怪しく見えるやり方は、とっくに通用しなくなっています。今も残っているのは、感じがよくて、親切で、話しやすい形なのです。
そして、知っている人から来るということは、断りにくいということでもあります。「先輩に誘われた」「友だちの知り合いから声をかけられた」。この状況で「いやです」と言うのは、大人でも簡単ではありません。
ですから、「怪しい人に気をつけなさい」という教え方では、この問題は防げません。
実際に持ちかけられているのは、強盗ではありません
もうひとつ、イメージと実態がずれている点があります。
闇バイトと聞くと、強盗のニュースを思い浮かべる方が多いと思います。ですが、先ほどの544件で持ちかけられた犯罪の内訳は、こうなっています。
| 持ちかけられた犯罪 | 件数 |
|---|---|
| 銀行口座や携帯電話の売買 | 132件 |
| 特殊詐欺に関するもの | 124件 |
| 窃盗・強盗 | 17件 |
いちばん多いのは、口座や携帯電話の売買です。
つまり、入口はこうです。「口座を貸してくれるだけでいい」「使っていない携帯を売ってくれるだけでいい」。
強盗をしてくれ、とは言われません。だから、多くの人が「これくらいなら」と思ってしまいます。
そして、それ自体が犯罪です
ここは、はっきり書いておきます。
銀行口座を売ること、貸すこと、譲ることは、それだけで犯罪です。お金をもらっていなくても、犯罪です。
しかも、罰は重くなりました。2026年6月10日に成立した犯罪収益移転防止法の改正により、2026年7月10日から罰則が引き上げられています。それまでは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金でしたが、現在は3年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方です。
この改正では、報酬を受け取って他人の送金を代行する、いわゆる「送金バイト」にも新しく罰則が設けられました。
さらに、貸した口座が詐欺に使われた場合、詐欺を手助けした人として責任を問われる可能性もあります。
加えて、自分の他の口座までまとめて凍結され、その後しばらく新しい口座を作れなくなることがあります。進学して、アルバイトを始めて、給料を受け取る。その入口が塞がることになります。
なお、こうして詐欺に使われてしまったお金は、被害者のもとへ戻ることがほとんどありません。その理由は詐欺被害のお金はなぜ戻らないのかで解説しています。口座を貸す行為が、誰の何を奪うことになるのかを知っておいてください。
なぜ、抜けられなくなるのか
ここが、保護者に知っておいていただきたい構造です。
警察庁の説明によると、応募した人は最初の段階で、犯罪グループ側に個人情報を渡してしまうケースがほとんどだとされています。
身分証の画像。住所。学校名。家族のこと。「本人確認のため」という理由で求められます。
そして、渡してしまったあとで、話の内容が変わっていきます。
ここで、やめると言えなくなります。相手は自分の情報をすべて持っている。家族のことも知られている。そう思った瞬間に、身動きが取れなくなるのです。
これは、判断力の問題ではありません。そういう順番になるように、はじめから設計されているのです。
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。警察庁は、犯罪グループには約束した報酬を元から支払うつもりがなく、応募者は使い捨ての要員であると説明しています。
高額な報酬を提示されて始めた人が、結局その報酬を受け取れないまま、捕まる側だけに残される。それが実態です。
よく使われる言葉
誘いの中で繰り返し出てくる言い方があります。子どもと共有しておいてください。
- 簡単に稼げる
- 即日、日払い
- 高額報酬
- 誰でもできる
- 先輩からの紹介
- 身分証を送ってくれれば
最後の項目が出てきたら、そこで止めてください。理由が何であれ、身分証の画像を送るよう求められた時点で、いったん家の人に見せる。これだけで、かなりの部分を防げます。
「うちの子は大丈夫」が危ない理由
この言葉が危ないのは、お子さんを信じているからではありません。前提が違っているからです。
先ほど見たとおり、きっかけの3割は知人の紹介です。断りにくい相手から来ます。
そして最初に頼まれるのは、口座を貸すことです。強盗ではありません。
つまり、判断力があるかどうかを試される場面ではないのです。試されるのは、断りにくい相手に対して断れるかどうかです。これは、大人でも難しいことです。
ですから、「うちの子は大丈夫」と考えるより、「うちの子にも来るかもしれない」と考えて備えるほうが、実際には守れます。
これは、お子さんを疑うことでも、保護者を責めることでもありません。相手のやり方が巧妙だ、というだけの話です。
家庭での話し方
ここからが本題です。何を、どう言えばよいのか。
叱らない、脅さない
「そんなことしたら人生終わりだからね」という伝え方は、逆効果になることがあります。
なぜなら、こう伝えられた子どもは、実際に何かあったときに言えなくなるからです。「終わり」だと言われていることを、親に相談できるでしょうか。
怖がらせることの問題は、ここにあります。届かないのではなく、相談の道を先に塞いでしまうのです。
「相談していい」を、何もないうちに伝えておく
最大の防犯は、これだと考えています。
何か起きてからでは遅いのです。何もない今のうちに、こう言っておいてください。
「もし、断りにくい話を持ちかけられたら、いったん家で話してくれる? 怒らないから。」
そして大事なのは、実際に相談されたときに、本当に怒らないことです。ここで怒ってしまうと、次はもう来ません。
相談された時点で、それは失敗ではありません。むしろ、いちばん良い形です。
そのまま使える伝え方
会話のきっかけとして、こうした言い方があります。
- 「口座を貸してって言われることがあるらしいよ。あれ、貸すだけでも犯罪なんだって。」
- 「誘ってくるの、知り合いのことが多いらしい。だから断りにくいんだって。」
- 「もし断れなかったら、断れなかったって言ってくれればいいから。」
- 「身分証の写真を送ってって言われたら、その時点で一回止まって。」
説教にしないことがコツです。ニュースを見たときや、車の中など、正面から向き合わない場面のほうが話しやすくなります。
お金にまつわる手口は、闇バイトだけではありません。身近な例ではPayPay返金詐欺のように、スマートフォンの画面だけで完結する手口もあります。あわせて話しておくと、「自分にも来るかもしれない」という感覚が育ちます。
もし関わってしまったときの相談先
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
応募してしまったあとでも、打てる手はあります。実際に、544件の保護が行われています。保護された人の年代は、20代が45.2%、10代が24.8%、30代が13.6%でした。
相談できる窓口を挙げておきます。
- 警察相談専用電話 #9110(緊急でない相談の窓口です)
- 各都道府県警察の少年相談窓口
- 消費者ホットライン 188
- 危険が迫っていると感じる場合は110番
警察庁も、「怪しい」「まずい」と思ったら、周りの信頼できる大人や警察に相談するよう呼びかけています。本人や家族の一時的な避難、周辺の見回りの強化といった対応が取られた例もあります。
早く相談するほど、できることが多く残ります。ここは、ためらわないでください。
学校と家庭で分担できること
すべてを家庭で背負う話ではありません。
- 学校は、全体への周知と、相談を受ける窓口を担えます。担任、養護教諭、スクールカウンセラーなど、相談先は複数あります
- 家庭は、日常の会話と、「怒らずに聞く」という約束を担えます
- 地域の警察には、少年相談の窓口があります。学校向けの非行防止教室などを行っている場合もありますので、詳しくはお住まいの都道府県警察にお問い合わせください
子どもにとっては、相談できる先が複数あることが大切です。家では言いにくくても、学校でなら言えることがあります。その逆もあります。
やってはいけないこと
怖い事例だけを見せて終わる
ニュースを見せて「こうなるよ」と伝えるだけでは、行動は変わりません。何をすればよいのかを、あわせて渡してください。
「うちには関係ない」で終わらせる
きっかけの3割は知人の紹介です。誰の家庭にも起こり得ます。
相談されたときに叱る
ここが分かれ目です。相談してきたということは、迷っている段階だということです。叱ってしまえば、次の相談先は失われます。
子どものスマートフォンを黙って見る
心配なのは分かります。ですが、黙って見たことが分かると、信頼関係が切れます。切れてしまうと、いちばん必要なときに話が来なくなります。見るなら、そのことを事前に話し合っておいてください。
まとめ
- 勧誘は怪しい人からは来ません。きっかけの最多は知人の紹介で、30.7%を占めます。断りにくい相手から来る、という前提で備えてください。
- 入口は強盗ではありません。持ちかけられた犯罪の最多は、口座や携帯電話の売買です。そして、口座を貸すことは、それだけで犯罪にあたります。
- 最大の防犯は、「困ったら相談していい」と何もないうちに伝えておくことです。そして、相談されたときに怒らないことです。
よくある質問
Q1:中学生にも、この話は必要でしょうか。
必要だと考えています。持ちかけられる内容の中心が口座や携帯電話の売買であることを踏まえると、高校生や大学生になって自分の口座を持ったときが、ひとつの節目になります。
その前に「口座を貸すのは犯罪」と知っているかどうかで、対応が変わります。実際に私が講演で話すと、生徒の反応がいちばん大きいのは、この部分です。
Q2:子どもが話を聞いてくれません。どうすればよいですか。
正面から座って話そうとすると、身構えられます。ニュースが流れたとき、移動中の車の中、食事の片づけをしながらなど、目を合わせない場面のほうが言葉は入ります。
一度で伝えきろうとしないことも大切です。「口座を貸すのは犯罪らしい」という一言だけでも、覚えていれば十分に働きます。
Q3:すでに個人情報を渡してしまったようです。何から始めればよいですか。
まず、お子さんを責めないでください。責めると、それ以上の情報が出てこなくなり、対応が遅れます。
そのうえで、警察に相談してください。緊急でなければ#9110、危険が迫っていると感じる場合は110番です。都道府県警察の少年相談窓口も利用できます。
「応募しただけだから相談できない」ということはありません。実際に、応募後に相談して保護された事例が積み重なっています。時間が経つほど選択肢は狭くなりますので、できるだけ早くご相談ください。
出典
※本記事の統計は、警察庁が公表した2024年10月から2025年11月末までの保護事例544件に基づいています(2026年9月時点)。制度や罰則は変更される場合がありますので、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。
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現役の中学校教員として、これまで548名の生徒・保護者・教職員に 金融教育と詐欺防止の講演を行ってきました。 2027年度までは、原則無償(交通費等の実費のみ)でお引き受けしています。
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【 男性教職員 が 夫婦同時3年育休 227】
〜娘を肩車〜
テンション爆上がりで、数少ない髪を引っ張り、頭をパシパシしながら満面の笑みで妻を見る娘👶
数ヶ月前と比べてドッと重くなった😊
幸せの重さなんだろうと納得しながら、ふと亡き親父もこんな気持ちだったのかと考えさせられました。
あと何回させてくれるのかな❓と思いつつ、育児、そして長期育休を家族で満喫します‼️
次の世代の選択肢をできる限り増やしたい。
今日も育児に奮闘するアナタを応援しています!
毎日金融教育更新と発信し、地道に教育現場へ金融教育を普及させていきます。
売る商品を持たない立場での金融教育を。
そして、とにかく一人でも多く「お金」で困らない人生の手伝いを。





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